株式譲渡契約書(役員の責任)

株式譲渡契約書に以下のような、売主側の役員(取締役等)の役員としての責任の追及を制限する条項を入れる場合があります。

 

(条文)

買主は、退任役員が対象会社の役員又は従業員として行った一切の職務の執行について、退任役員に対して一切の責任(会社法第423条又は同法第429条に基づく取締役及び監査役の責任を含むがこれに限られない。本項において以下同じ。)を追及せず、また、対象会社、対象会社の役員及び株主をして一切の責任を追及させない。

 

これによって、オーナー社長が株式譲渡前に社長として行ったあらゆる事柄を免責し、買主の救済手段を株式譲渡契約書上の方法に限定することができます。

 

この場合に問題になるのが、株主=社長では無い場合。たとえば、創業者の死後に創業家から社長を選出せずに、従業員などから社長を選出して、所有と経営が分離している状態が長く続いているような場合です。

創業家は経営陣が不正や著しい過誤をしているか否かわかりませんので、対象会社にかんする表明保証は限定的にしてほしいと主張します。一方買主としては会社がキチンとしている前提の価格を提示しているのだからしっかり表明保証して欲しいと主張するでしょう。

この場合には、この役員の責任の条項を入れずに、買主が経営陣に責任追及できる余地を残すのも手かと思います。もちろん、役員に資力がないような場合には難しいかもしれませんが、たとえば経営陣が株式の10~20%なりの少数株式を保有し、その株式譲渡と同時に譲渡するような場合には一定程度の効果が見込めるものとして交渉のバッファーが生まれる可能性があるかと思います。